FC2ブログ

東京国際映画祭 『乱[4Kデジタル復元版]』/黒澤明監督 トークショー(2015.10.25)

2015/10/25
2015/10/25 10:30
新宿ピカデリー シアター3

東京国際映画祭
乱[4Kデジタル復元版]/黒澤明監督

トークショー
仲代達矢氏(俳優)
原田美枝子氏(女優)
ワダ・エミ氏(衣裳)
野上照代氏(プロダクションマネジャー)
ヴィットリオ・ダッレ・オーレ氏(助監督)

時系列のままの書き起こしになります。
読み難い点もあるかと思いますが、ご容赦ください。
誤りや補足等ありましたら、お知らせいただけますと幸いです。
※一般撮影禁止

-----------------------------------------------


映画プロデューサー・原正人氏からの書簡
(※原正人氏は『戦場のメリークリスマス』も手掛けられた方)
へラルドのふかわかつみ(漢字不明)という名前を憶えて帰ってもらえたら。
フランスの映画会社が資金提供を決めてくれた、まさにその決定をしてくれた方。

■仲代達矢氏(一文字秀虎役)
撮影時49歳、現在もうすぐ83歳。俳優は60年やっている。
乱は時空を超えて、素晴らしい作品。
その当時評判でも今はない作品も、
当時はいまいちでもあとから評判になる映画というのもあるが、
乱は、本当に時空を超えて、今見ても素晴らしい作品だと感じた。

■原田美枝子氏(楓の方役)
大きなスクリーンで観たのは、数年ぶり。
全スタッフ、全キャスト、まさに全員が命懸けだった。
末の方のところで、涙が出てしまった。
楓の方(自分)のオーダーだけど、
無意味な死を受け入れなければならないなんて…

■ワダ・エミ氏(衣装)
何年かに一度、乱を見る機会がある。字幕や吹き替えも。
ドイツやNYで、シェイクスピア作品の観覧会等がある。
長い準備期間を経て、撮影をお供して、
今日は初めて、客観的に映画の世界に入って観ることができた。
今までは、仕事のことを思い出して観ていた。

■野上照代氏(プロダクションマネジャー)
(司会者の方の紹介に対して)肩書なんか、どうでもいいんだ。
ワンカットのために、一日かかっていた。
仲代さんは、すごかった。
黒澤監督は「カンヌの主演男優賞を(仲代さんに)あげたかったなぁ」と言っていた。
いろいろ難しいところはあるけど、本当に素晴らしい映画

■仲代達矢氏(一文字秀虎役)
メイキャップに4時間かかった。
鏡に「(忍耐の)忍」と書いていた。
(当時49歳の仲代さんに対して)
黒澤監督「なんで仲代くん、皺がないんだ?」と。
皺を一本ずつ埋めていく。
そのメイクを剥がすときが、一番気持ちいい。
それから、随分怪我をした。
私も死にもの狂いだった。
5時に起きて、4時間かけてメイキャップした。
メイクが終わって出ていくと、
黒澤監督「今日はやめ」
仲代「どうかしましたか」
黒澤監督「二日酔い」
その場で、貼ったメイクをばっとはぎ取った。

■司会者さん
中止のとき、メイクをはぎ取る仲代さんの顔がどれだけ怖いか
本当に乱って感じなんだぞと、別のスタッフの方に聞かされました(笑)

■ヴィットリオ・ダッレ・オーレ氏(助監督)
素晴らしい映画で、黒澤組で仕事ができて、本当に幸せだった。
今日観たら、くたびれました。
3秒撮るのに、一日かかる。
お天気待ちも多い。
編集室(普通は入れない)へ入って、クズのフィルムを使って勉強した。
しおみななさんの紹介で、加わることができた。
初めて黒澤映画に携わったとき、ひとことも日本語が喋れなかった。
一人で日本語を勉強した。
こんなに素晴らしい映画を学べる環境で、日本語ができなければ
(吸収できない)と思った。
※AKドキュメント映画内で、サイレント映画のように走り回っていた。

■仲代達矢氏(一文字秀虎役)
編集パートがない。黒澤監督が自分でやってた。
編集のときに演出する。いいところだけ取る。
とても普通の人にはできない。
黒澤監督は、乱を撮り終えたとき、
「これは神様が俯瞰から、人間はだめだねぇというものを作った」と。
人間が欲望を持っている限り、どこかで戦争をしている。
乱は、最大の悲劇を描いた。

影武者で勝新太郎さんの代役をしていて、
落馬して10日間休んだ。
半年間毎日馬の稽古をして、流鏑馬もできるようになった。
でも、映画で映ってるのは、3秒。
でも改めて、良い仕事をしたなと思った。

■原田美枝子氏(楓の方役)
仕事を初めて7~8年で、落ち込んでいたとき、
乱のオーディションを受けたらどうかと勧められた。
黒澤監督と、マネージャーもなしで、二人で話をした。
黒澤監督「眉毛を剃ることにことになるのですが、どうですか?」と。
眉毛くらい、どうでもいいと(いう気持ちだった)
鼻の骨を折るとかでないんだから。
そこで、自分の両手で眉毛を隠して、こんな顔になりますが、どうですか?と。
黒澤監督は「おお」と(笑)
その後、台本をもらって、
黒澤監督「(楓の方か、末の方か)どちらの役がやりたいか、合うか知りたいので、
台本を読んだら、連絡をください」と。
自分もとがっていた頃だし、楓の方の方が絶対面白いと(楓の方を希望した)
でも、本当に命懸けだった。
(※原田さんは当時なんと25歳の若さ!)
黒澤監督が、怖くて。
ちょっと見られただけでも、本当に怖かった。
直接は怒らない。
きっと監督の思っているところに、自分の演技は届いていないとずっと思っていて、
監督に怒られる夢を見た。
撮影が終わった後に「もう僕の夢みないでね」と。
ずっと覚えてらしたんだと思って。

組み伏せるところは、殺陣師の久世竜さんに教えていただいた。
目の前でやって見せてもらったあと「やってみて」と言われて、
一歩も動けなかった。
そのうちできるかな、とのほほんと考えていて、
4ヵ月リハーサルをして、そうしたら今度は、
早くて見えないから、もっと溜めを作ってと言われるようになってた。

■仲代達矢氏(一文字秀虎役)
喜劇の要素を入れる。
これだけやれる人はいない。

■野上照代氏(プロダクションマネジャー)
これだけの数の馬を使える人はいない。
馬は、50頭アメリカから買った。

■仲代達矢氏(一文字秀虎役)
火事になった城から出ていくシーンで、
テストは一週間。
黒澤監督「仲代くん、このとき秀虎は気が狂っているから、下見ないでね」
自分は舞台出で摺り足は慣れているから、できると思っていた。
黒澤監督「お城四億円かかってるから、こけないでね。こけたら四億円の損だよ」と。
22段、ワンカット、ワンテイク。
仲代さん「大丈夫です。(足の)親指に目がついてますから」
野上照代氏「仲代さんは、度胸がある」
演技で階段を下りながら、胸の奥では「四億円…四億円…(笑)」
野上照代氏「撮り終わって、黒澤監督は「今日は乾杯だ」とおおいに喜んでいた」
27億円の製作費のうち、4億円がお城だった。
セットの火事は熱かった。
仲代さんは、ちょっと火傷した。

■ワダ・エミ氏(衣装)
初めて黒澤監督にお会いしたとき
ワダ・エミ氏「蜘蛛巣城が一番好きです」と伝えた。
黒澤監督「リア王もあるんだよね」と仰った。
ワダ・エミ氏「じゃあ、それ私やりたいです」と。
当時、ワダ氏は30代。
言っちゃって、数年後に連絡があった。
美術のむらきさん経由にて。

打ち合わせの際、能や狂言のたくさんの資料を持参した。
リア王を日本に置き換えるということだったので。
その際、戦国時代や天正時代がよいと思った。
一番ゴージャスな時代だから。
デザインを見せた際、
黒澤監督「もっといいのはないの?」と。
この人は3つ(デザイン画を)出さなきゃならないなと思った。
監督はこれを選ぶなという本番の他に、2つダミーを出す。
一枚だと、必ず「もっといいのはないの?」と言われる。
ので、以後3枚ずつ出した。

ワダさんは、全部作るつもりでいた。
時間がない。
もういいですか?やりますよ?
監督に確認して、発注をした途端、中止になった。
生地や衣装が届くも、一旦解散となった。

6ヵ月経って、黒澤監督にしたら珍しく、朝6時に電話があって、
「ワダくん、待たせたけど、やっとできるよ」と。
ヘラルドのおかげで。
もうね、涙がボロボロと出てきて。

クランクインの前に、全部の衣装があったのは、
後にも先にも、乱だけです。
6ヵ月は、決して無駄ではなかった。
いろんなダメ出しや意見を出した。
お城の秀虎の衣装を、監督がとても気に入ってくださって、
以降、仲代さん(秀虎)ずっとこの衣装のまま。
寝間着にローブのようなイメージで作った。
映画は時系列で撮っていくわけではないので、
都合、4着作った。
汚しに3着を使った。

■ヴィットリオ・ダッレ・オーレ氏(助監督
若いときに、七人の侍を見て、素晴らしい映画だと思って、
しおのななみさんの紹介で伺った。
黒澤監督は怖かったか?怒るときどんな感じだったかをよく聞かれるけど、
最後の神様のことを言う台詞に、監督の様子は全部表されている。
野上照代氏「あれ(神様の台詞)が言いたくて、あれ(乱)を作ってる」

「神も仏もあるものか。いや神も仏も泣いているのだ」

■仲代達矢氏(一文字秀虎役)
ラストシーンの撮影は、
何日も待って、天気を待って、稽古も何日もして、1ヵ月待って、
そうしたら、黒澤監督が「今日は撮るよ」と。
仲代「どうしてですか?」
黒澤監督「今日ね、胸が痛かったから」
リア王で、最後に王は胸が痛くなって死ぬから。
そしたら、本当に晴れて、撮影できた。
本当に神懸かってた。

■野上照代氏(プロダクションマネジャー)
先生先生言うけど、200頭の馬を使った撮影で、
うまくいくと、(騎乗していた)200人と握手。
反対に、馬絡みで、ストライキもあった。
一日休んで再開した。
演出力が、並外れてる。

サルトルの言葉通り、人間で一番嘘つきは役者

最後に、司会者の方のはからいで、
なんと客席に、撮影された上田正治氏もいらしていて、
会場から大きな拍手。

時間を大幅に超えての贅沢な、トークショーでした。
ゲストの方々が退場される際、最後の仲代さんが、
客席に向かって、深く一礼されてらして、胸がいっぱいになりました。


◆記事
仲代達矢 30年ぶり「乱」復元版を絶賛「天才・黒澤は時空を超える」
(スポニチアネックス)
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/10/25/kiji/K20151025011386920.html
スポンサーサイト



comment (0) @ 映画
スティーヴ・マックイーン アーティストトーク(2016.7.22) | 映画『つぐない』の書留メモです。マカヴォイについてはあまり語ってません。

comment

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する